アメリカの通勤事情カルトレイン通勤体験記!

アメリカの通勤事情

 

今回の記事はアメリカのサンフランシスコ・ベイエリアを走っているカルトレインという通勤列車についてレポートしたいと思います。日本の通勤電車とはかなりの違いがあり、歴史的背景にも興味深いものがあります。

ご存知の通りアメリカは自動車大国です。人々の移動手段として大半はマイカーを使用しており、アメリカの道路上を走っている車の約76%が1人のりで走っています(同乗者がいない状態)1人1台の車を使うというのがまだまだ当たり前の世界です。

西海岸のサンフランシスコ周辺も同じで、大半の人々が車通勤しているため、サンフランシスコとシリコンバレーを結ぶ2本の高速道路、US-101とI-280はラッシュアワーになると毎日大渋滞を繰り返しています。

 

©2019 USANCO    朝のフリーウエイ大渋滞

そんなアメリカでは電車通勤は超マイナー派です。大都市圏には地下鉄があるところもありますが、殆どの都市では郊外通勤用電車は少なく、アメリカの鉄道を全体的に見ると貨物用路線が大半を占めています。

なぜ通勤列車が発達していないのか?

アメリカはなぜ、日本のように通勤用の鉄道が発達しなかったと思いますか? そんな疑問を持った私は歴史に詳しいアメリカ人の複数の方に聞いてみました。独特の歴史的背景があります。

理由は1920年代以降、車を製造販売してそれを拡販したい自動車会社=ビッグスリーやガソリンの販売増を狙った石油会社が次々に鉄道会社を買収し解体していった(潰していった)のが理由とのことです。

別の理由としては、当時大気汚染や省エネの意識が全くなかったのと、日本のように国土が狭いわけではないので、都市開発や住宅地開発が低密度(要するに広々としている)で計画され、人々の移動を鉄道のような高密度化する必要(狭いところに押し込む)がなかったからだと言われています。

そんな中、サンフランシスコ市やサンフランシスコ半島内のシリコンバレーはアメリカの他の都市と事情が異なり、半島内は敷地が限られていて比較的高密度で都市が開発されました。よって鉄道会社が解体されずに現代まで残ったのではないか?という意見もあります。

ベイエリアの足、通勤列車カルトレイン

 

©2019 USANCO    Caltrainのロゴ

ベイエリアと呼ばれるサンフランシスコとシリコンバレー周辺地域の通勤の足として認知されているカルトレインですが、その歴史は古く、まず1863年にサンフランシスコ〜サンノゼを結ぶ、サンフランシスコ・サンノゼ鉄道が開業しました。

その後1870年にサザン・パシフィック鉄道に買収されましたが、やる気があまりなく赤字続きでついに1977年に廃止の意向を固め、当時のカリフォルニア州公益事業委員会と沿線地域の自治体が「廃止は困る」と運行権を譲り受けて1987年にカルトレイン(Caltrain)として創業、再スタートしました。

サンフランシスコ市南端のキングストリートからシリコンバレーのさらに南の街ギルロイ(ニンニクの産地)まで約125kmをつないで、今やサンフランシスコとシリコンバレーを結ぶ重要な通勤列車として活躍中です。

しかし、旅客運賃の売り上げは運営費の約半分ほどしかないため、残りは税金でまかなわれています。

電化されていないのでディーゼル機関車が使われていて、列車は客車5両の合計6両編成です。客車は2階建車両で、1階は2列+2列、2階は吹き抜け+1列+1列のシート構成となっています。

 

©2019 USANCO    ディーゼル機関車
©2019 USANCO    2階建客車内の様子

変わっているのがサンフランシスコからギルロイまでの下り列車は機関車が先頭にあり5両の客車を引っぱるのですが、サンフランシスコ行きの上り列車は最後尾の機関車が5両の客車を125kmもの距離をバックして押していく走り方で、先頭となる客車の端部に運転席があります。(下記動画ご参照)

急行や快速は結構なスピードを出しているので「よく脱線しないなー」と感じたものです。

以下、ヒルズデール駅で撮影した上下の列車動画をご覧ください。アメリカの大陸横断鉄道と同じ鐘の音が「カーン!カーン!カーン!」と鳴っているところがなんとも趣があります。ディズニーランドでも聞けますよね?(動画は音が出ます。音量にご注意下さい。快速列車が通過します。)

 

©2019 USANCO

 

日本の通勤電車と全く違う環境・雰囲気

カルトレインのサンフランシスコなど大型の駅以外の駅は基本無人駅で、駅前のデパートや飲食店もなく、駅近のマンションも皆無です。線路の近くにあるものは自動車修理工場や一般的な工場、倉庫などです。

カルトレインの通勤時間帯、朝は6:00〜9:00、夕方は16:00〜18:30頃ですが、日本のラッシュアワーのような寿司詰めというのはなく、だいたい座れます。立っている人はさほど多くはありません。

乗客はスーツを着ている人を全然見かけません。格好はジーンズにTシャツかフード付きパーカーを着ている人が多いです。

ラップトップを開いてキーボードを叩いている人々をよく見かけます。IT企業のエンジニアやプログラマーがコーディング作業をしている風景です。完全成果主義の彼らにとっては通勤時間帯でも1秒も無駄にせずコーディングし、早く帰途につきたいのです。

夕方のラッシュアワーは18:00台にほとんど収束し、19:00になると駅のホーム上の人影はまばらです。

平日のある日、私が19:15くらいにホームに立った時、人が私を入れて3人ほどしかいなかったことに衝撃を覚えました。ベイエリアでは列車のラッシュアワーが18:00台で完全に終わるのです。

アメリカの人たちが、なるべく早い時間に家に帰り、家族と一緒に夕食をとるということをとても大事にしていてそういう習慣がレアではなく、当たり前に社会全体に根付いているのがよくわかる情景でした。

カルトレインの乗り方と注意事項

カルトレインの乗り方は券売機でチケットを買う方法とClipper Cardという交通系カードで乗る方法があります。料金はゾーン制になっており、同じゾーン内は$3.75、隣のゾーンは$6.00、2ゾーンは$8.00、3ゾーンをまたぐと$10.75……という具合です。

 

©2019 USANCO   交通系カードのClipper Card

Clipper Cardというサンフランシスコ周辺で使われている交通系カードはBARTという地下鉄や、フェリー、MUNIと呼ばれる市内バスや路面電車でも使えるのですが、カルトレインだけ使い方が固有で気をつけなければいけない所があります。

 

©2019 USANCO  Clipper Card リーダー

Clipper Cardをリーダーに当てるとTagging Onといって「ピーッ」というのですが、その際にまず$25が引かれます、そして降りた時にTagging Offすると「ピピッ」と鳴り、運賃が引かれた金額が返却されます。例えば$8.00の運賃の時は$17が返却されます。

この仕組みを最初に理解していなかった私は降りた時にTagging Offをしなかったために、2回も$25引かれたままとなり、合計$50も支払ってしまい大損しました。本当は2回の乗車で合計$16で済んだはずのものを。

日本のように改札がなく、Clipper Cardリーダーが立っているだけなのでTagging Offしなくても駅から出られてしまうのです。ここは要注意です。

 

自転車を積み込むことができるBike Car

 

©2019 USANCO

カルトレインのユニークなところはBike Carと呼ばれている自転車を積むことができる客車が2両連結されていて、2階建車両の1階部分が自転車置き場になっています。

 

©2019 USANCO   自転車そのまま積み込み可
©2019 USANCO   1Fの自転車置き場

1車両につき40台ほどの自転車を積載でき、1編成で約80台もの自転車を運ぶことができます。2階部分は客席になっており、中央の棚にはヘルメットやカバンなどを置くスペースになっています。この立体感ある空間がなんとも不思議な光景です。

私は普段は車でサンフランシスコ市内まで通勤することがほとんどでしたが、たまに気分を変えて自転車をカルトレインに積んで通勤のマンネリ化を避けていました。

 

©2019 USANCO  サンフランシスコ駅のホーム。自転車を引いている人もちらほら

ラストマイルと言われる、自宅から駅、そして到着した駅から職場への道のりを自転車でつなぐという通勤、日本ではなかなか手軽にはできない体験をすることができました。

Bike Carの利用方法

自転車があってもなくても利用料金は変わらず、利用の仕方はバイクタグと呼ばれる黄色いタグをあらかじめ駅員さんか車掌さんにもらっておき(無料で配布しています)自分が乗る駅と降りる駅を明記して、自分の自転車に付けておきます。(サドルの下あたりが望ましい)

 

©2019 USANCO  駅員さんにもらったBike Tag

カルトレインのウエブサイトからPDFファイルをプリントアウトして紙製で代用することも可能です。紙だとすぐボロボロになるので、プラ製の正規品をCaltrainの従業員にもらうことをお勧めします(懐に常備しています)

 

Caltrain公式HPはこちら

 

Bike Car 1階部分のバイクラックに自分の自転車を積む際のルールがあり、置かれている自転車のバイクタグを見て、自分の降りる駅と同じか降りる駅より遠い駅で降りる人の自転車には重ねてもOK。付属されているゴムバンドでラックに自転車をくくりつけておきます。

自分の降りる駅より手前の駅名がバイクタグに書かれている時はそこに重ねることができません。その自転車の持ち主がスムーズに自転車を取ることができるようにするためです。

 

なんと客車は日本製でした!

線路も広く、車両も大きく、アメリカの列車はスケールが違うなーと思いきや、よく見ると客車は日本車輌製でした。アメリカの規格に合わせてこの大型客車を100両弱ほど受注しているようです。

 

©2019 USANCO

しかし、2020年に車両をリニューアルするらしいのですが、残念ながら次の車両はスイスの鉄道車両会社が受注したらしく、日本製車両もやがて姿を消してしまいます。んー、なんだか寂しくなりますね。

 

©2019 USANCO

高密度化している日本の通勤列車ではなかなか難しいとは思いますが、自転車専用車両を追加するなど、ラストマイルモビリティー(自転車など小型の乗り物)を積むことが可能となってマルチモーダル(多様な方法の)通勤・通学が将来できたらいい街づくりになるのではないかと。

 

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